1. 除菌とは
1.1 用語の違い
1.2 細菌とウィルスの違い
1.3 エンベロープ
1.4 薬機法による制限
2. 除菌剤の種類
2.1 アルコール系
2.2 銀イオン系
2.3 次亜塩素酸ナトリウム系
2.4 次亜塩素酸水系
3. 除菌剤の効果の違い
3.1 作用の仕方
3.2 効果
1. 除菌とは |
1.1 用語の違い |
滅菌 菌を完全に近い状態まで死滅させること 日本薬局方では微生物の生存する確率が100万分の1以下になることをもって滅菌と定 義している |
殺菌 菌を殺すこと(対象の菌の一部を殺しただけでも殺菌といえる) 医薬的な表現なので薬機法の適用を受け、医薬品や医薬部外品にのみ表記できる |
消毒 |
病原性のある微生物を減らすこと、または能力を減退させて弱体化させること 殺菌同様に薬機法の適用を受ける |
除菌 |
菌を取り除き減らし、清浄度を高めること 洗剤・石鹸公正取引協議会の定義ではカビや酵母などの真菌類は対象外となる |
抗菌 |
菌の増殖を抑制すること 経済産業省の定義では抗菌の対象は細菌のみとしている |
1.2 細菌とウィルスの違い |
細菌 | ウィルス | 真菌 | |
細胞 | ある(生物) | ない(非生物) | ある(生物) |
大きさ | 1~10㎛ | 0.01~0.1㎛ | 数㎛ |
増殖方法 | 周りにエサがあれば自己増殖 | 他の生物の細胞内に入り、その細胞の増殖機構を借りて増殖 | 細胞に定着し菌糸を成長させていく |
対策 |
抗菌薬(抗生物質) |
抗インフルエンザウィルス薬など。通常の風邪に対する薬はなく、症状を緩和するのみ | ポリエン系、アゾール系、フロロピリミジン系、キャンディン系抗真菌薬 |
主な病原体 | 百日咳、マイコプラズマ肺炎、梅毒、結核、コレラ、ジフテリア、赤痢、O157など | 風邪、インフルエンザ、ノロ、ロタ、コロナ、水疱瘡、麻疹、風疹、デング熱など | 白癬菌、カンジダ、アスペルギルスなど |
1.3 エンベロープ |
簡単に言うと |
油の膜で体を覆っている |
ウィルスはエンベロープという脂質性の膜を持っているものとノンエンベロープという膜を持っていないものに別けられます。
この脂質性という特徴から、アルコールの脱脂作用や界面活性作用などがこの膜を溶かしやすいのです。
新型コロナウィルスもこのエンベロープを持っているのでアルコール除菌や、石鹸による手洗いが有効ということになります。
一方、この膜を持っていないものをノンエンベロープウィルスと呼びます。膜がないから弱いということはなく、膜がなくても存在できる強靭さを持ち合わせています。そのため、アルコール除菌や石鹸では効果が期待しにくくなります。 ウィルスの中でノンエンベロープウィルスはおよそ20%存在し、ノロやロタはその一部です。
|
1.4 薬機法による制限 |
簡単に言うと |
曖昧な表現方法になる |
1.1にも出てきた薬機法ですが、適用を受けない一般的な除菌剤(雑貨扱い)は「殺菌」「消毒」という文言が使えません。更に効果効能が謳えず、特定の細菌やウィルスに対する効果を標榜することも出来ません。
〇〇対策、〇〇予防、〇〇効果
これらは効果効能を謳っているため不可
新型コロナに、花粉症に
これらは細菌やウィルスを特定しているため不可
清潔な空間を、花粉も安心
これなら大丈夫そうですが、分かりやすくお客さんに伝えたいのに直接言えないのでどう表現するか、コピーを考える人は大変です。
2. 除菌剤の種類 |
2.1 アルコール系 |
- 殺菌(除菌・消毒)に使用されるエタノール(アルコール)の殺菌効果の至適濃度範囲は日本薬局方:76.9~81.4v/v%、WHOガイドライン:60~80v/v%
- ノンエンベロープウィルスのノロなどには効果が薄い
- 濡れた場所に使用すると濃度が変わり効果が低下する
- 濃度が90%などと高くなると殺菌より揮発が早くなり効果が低下する
- 殺菌力に持続性はなく二次汚染防止には効果が薄い
- ゴムや樹脂は変質の可能性がある
- 目や粘膜にはかからないように注意が必要、肌荒れする
2.2 銀イオン系 |
- 水の中にイオンの形で銀が存在している
- 低い銀イオン濃度で殺菌効果が認められている
- 0.01mg/L(ppm)で細胞の活動を抑制する
- 揮発せずに残ることによって効果の持続性(抗菌)がある
- 人体や金属などに対して影響がない
2.3 次亜塩素酸ナトリウム系 |
- 強アルカリ性を示し、家庭用の漂白剤や殺菌剤として使われている
- 強アルカリのため皮膚炎や粘膜刺激を起こす
- 酸性溶液と反応し毒性の強い塩素ガスを発生する(混ぜるな危険)
- 漂白作用や金属腐食性がある
- 水で希釈しても次亜塩素酸水にはならない
2.4 次亜塩素酸水系 |
- 塩酸又は食塩水を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液
- 電解水は分解速度が極端に早いので保存に適さない、長くて1年
- 紫外線や有機物と接すると分解して水になる
- ほとんどすべてのウィルス・細菌に効果がある
- 人体に害はないが、金属は錆びる
3. 除菌剤の効果の違い |
3.1 作用の仕方 |
アルコール系
- 細胞膜の脂質を溶かす
- たんぱく質の変性により機能を失わせる
- 細胞内部に侵入し内部の液体ともども蒸発する
銀イオン系
- 銀を触媒として活性酸素が出来、活性酸素が細胞膜に穴をあける
- 細胞内部に侵入し、酵素の働きを阻害し不活化する
- 細胞分裂を抑制する
次亜塩素酸水・ナトリウム系
- 残留塩素が呼吸系酵素を阻害し、細胞の代謝を停止させる
- 細胞膜やたんぱく質、核酸に多面的に作用して酸化的に損傷を与える
3.2 効果 |
除菌力 | 即効性 | 抗菌 | 人体への影響 | 金属他の影響 | 使用期間 | |
アルコール系 | 〇 | ◎ | × | △ | △ | 〇 |
銀イオン系 | 〇 | △ | ◎ | 〇 | 〇 | △ |
次亜塩素酸ナトリウム系 | ◎ | △ | 〇 | × | × | △ |
次亜塩素酸水系 | ◎ | ◎ | △ | 〇 | △ | × |